胃潰瘍・十二指腸潰瘍・ピロリ菌
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とピロリ菌の関係
一般によく知られている「潰瘍(かいよう)」には胃潰瘍と十二指腸潰瘍があります。
以前は胃酸と粘膜のバランスが崩れることで起こると考えられていましたが、1982年に胃の中にピロリ菌がいることが発見され、その後の研究でピロリ菌が潰瘍の原因の多くを占めることがわかってきました。
症 状
- みぞおちが痛む
- 胃がもたれる
- 胸焼けがする
- 吐血(血を吐く)
- 下血(真っ黒なコールタールのような便が出る)
※全く自覚症状のないこともあります。
検 査
胃の状態を調べる検査としては、バリウムを使ったX線検査(胃透視)と内視鏡検査(胃カメラ)があります。
胃透視は検診でよく使われますが、バリウムを胃の壁に付着させ、空気で胃をふくらませて、胃の表面に異常がないかを調べる検査です。
胃カメラは内視鏡を直接胃に入れる検査で(食道、十二指腸も見えます)、表面の粘膜を直接観察することができ、異常があれば組織を調べたり、治療したりすることができます。
胃透視は楽で胃カメラは苦しいので、まず最初に胃透視で病気の有無をチェックして、何かあれば胃カメラをするということが以前は多かったのですが、最近は胃カメラ自体も細くなり、また胃透視と胃カメラの2回の検査を行うのは不経済であり、患者さんの負担も大きいため、胃の症状がある場合は最初から胃カメラを行う機会も増えてきました。
特に経鼻内視鏡という鼻から入れられる細いカメラが普及してきてからは、積極的に胃カメラ(経鼻内視鏡)が行われるようになり、胃カメラを用いた胃癌検診も行われるようになってきました。
治 療
強力に胃酸を抑える薬が標準治療薬になります。
ピロリ菌がいる人の場合は(尿、血液などで簡単に調べられます)、菌を除菌する治療も行います。
ピロリ菌が除菌されれば、十二指腸潰瘍の再発はほとんどなくなりますが、胃潰瘍の場合は別の原因で再発する可能性が多少は残ります。また胃癌の発生リスクも残りますので、除菌後の定期的な内視鏡検査が必要となります。
ピロリ菌とは?
本名:ヘリコバクター・ピロリ
感染経路:ピロリ菌のいる親から離乳食をもらう時に、親が食事を口で咀嚼して子供に与え続けたことが一因と考えられている。
感染状況:各国の衛生環境との関わり合いが深く、発展途上国で感染率が高く、先進国で低い。
日本は先進国の中では例外的に感染率が高く、人口の50%以上が感染していると考えられており、
特に昭和30年代以前に生まれた人の感染率は高く、70〜80%と言われている。
関連する疾患として、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・MALTリンパ腫の主要な原因と考えられている。
慢性胃炎から多くの胃癌が発生することにより、ピロリ菌は胃癌の原因のひとつと考えられている。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけでなく、内視鏡で慢性胃炎と診断された方もピロリ菌の検査、治療が健康保険を使って受けることができるようになりました。